今年の木次桜祭りは4月の1日と2日。
そこまでに桜の開花が間に合うのか心配な、劇団ハタチ族の西藤将人です。
先日本番を迎えた『異伝ヤマタノオロチ』を振り返ってみる。

雲南市創作市民演劇は実行委員会のみなさんを中心に、
作・演出の亀尾先生、チェリヴァホールのスタッフの皆さん、そして参加者の尽力によって発展してきた。
参加者も約30名から約80名と膨れ上がり、市内はもちろん、県外からの注目もある。
今回の異伝ヤマタノオロチのチケットは早々に完売。
亀尾先生のあらゆる意味でのギリギリの演出には毎回ヒヤヒヤさせられながらも、
作品はよいものになった。これぞ雲南市民劇という作品に。
木次商店街を歩けばポスターが並び、
本番後は地域のみなさんに「おつかれさま」と労っていただける。
これも演劇が雲南市に根付いてきた証拠。ありがたい。
ありきたりな言葉だけど、参加できてよかった。
くさらず演劇を続けてきて、本当によかった。
僕を受け入れてくれた皆さん、座組みのみんな、ご来場してくださったお客様、
関わってくださった全ての皆さんに感謝いたします。
本当にありがとうございました。

ふむふむ、ところで西藤はどうなんだと。ちゃんと自分のことを振り返れと。
このブログを読んでくださってる皆さんはそろそろ感じたんじゃなかろうか。
綺麗なことばっかり言ってんじゃないよと。
わかっておりますよ。でもね、素直に書いてるんですよ。
素直に、振り返ります。
初演の『異伝ヤマタノオロチ』から5年。
この歳月は僕にとって大きなもので、実際ハタチ族はまだ劇団じゃなかったし、
雲南を拠点にずっと演劇やってくって決めたのもこの期間だ。
なにより5年前はチャラチャラ演劇やってた気がする……。情けない。
365日公演や単独ツアーやったりしたけど、実際どこまで成長したのかよくわからないしね。
とはいえ一般参加だった前回と、特別出演となった今回。
『異伝ヤマタノオロチ』という作品は変わらずとも立場や責任、重圧ってのは変化した。
勝手に自分にプレッシャーをかけて、理想と自力の差にモヤモヤもした。
まぁ所詮今の自分はこんなもんだって納得もしてるから無駄に落ち込むこともないですけどね。
でもね、僕のちっぽけなモヤモヤなんか吹っ飛ばしてくれる人たちがいたんです。
それは、今回市民劇に参加していた子供達。

打ち上げで速水雄一雲南市長がこんなことを言ってた。
「演劇やってれば学校なんていかなくていい!それぐらい演劇、市民劇は素晴らしい!!」
おいおい、そんなこと言っちゃっていいのかと思いながらも素直にその言葉は嬉しく、
同時に納得もした。
それは僕も学校にあまりいかなかった人間だからではなくて、
市民劇に参加している子供達は本当にめっちゃしっかりしてるし、賢いし、なによりチャーミング。
稽古場での吸収率が半端なく、直前までキャーキャーしてるのに舞台に立つと誰よりも堂々としている。
いやはや、凄いわ……。
僕はいまのところ子供のためだったり、子供向けの演劇やってるわけじゃないけど、
なんだかこれからの活動に影響を与えられそうな気がしてならない。
最近ワークショップをやりたいって無性に思うのもそのせいなのかもね。
あ、それと今回嬉しいことがあった。
それは、三刀屋高校演劇部の生徒たちがたくさん参加してくれたこと。
彼女達のことは1年生の頃から知っていて、僕は自主公演を手伝ったこともある。
その後も演劇を続けていた彼女達は、この春卒業してそれぞれの道を歩んでいく。
じつに感慨深い。
学生生活を送りながらの演劇は、きっと楽しいことばかりではなかったと想像する。
それでも続けてくれたことに感謝したい。本当にありがとう。

僕は今回貴女達と一緒に舞台に立てたことが誇りです。
そしていつかまた一緒に演劇やることが僕の夢の一つです。
そんな素敵な夢を与えてくれてありがとう。
これからもずっと演劇を好きでいてくれることを願っていますし、
そのためにも僕はこれからも演劇やっていきます。
市民劇がこうして続いてたから僕も彼女達も舞台に立てたわけで、
そう考えたら5年後は一体どうなってんだろう。僕も子供達も彼女達も市民劇も、そして演劇も。
これからどうなっていくのかわからないけど、雲南市創作市民演劇はずっと続いていってほしいし、
参加者のみなさんも演劇とこれからも近くにいてほしいな。
もちろん僕にできることがあれば全力でやるしね。
うん。続けるってこと、それが一番大切。
それが生きるってこと。それが演劇なんだな。
そんなことを感じた、雲南市創作市民演劇『異伝ヤマタノオロチ』でした。

そして最後に、ひとつだけ。
雲南市創作市民演劇の本番はほとんどが3月中旬におこなわれてきた。
5年前の異伝ヤマタノオロチ初演もそうだった。
当時は2012年。東日本大震災からちょうど1年をむかえていた。
本番1週間前の稽古場。参加者全員で黙祷を捧げた。
あれから5年。2017年のあの日も、今年も稽古をしていた。
演劇ができる喜びを噛み締めて、演劇のために演劇をする覚悟と向きあいながら。
来年も、これから先もずっと、演劇をしていく。
終わっていないから。決して忘れないから。
雲南で続けていく。生きていく。演劇で。
劇団ハタチ族 代表 西藤将人
